言海祥太です。

もう昨年の話になりますが
広告的にもアート的にも話題になりましたよね。この映画。
見ましたよね?

『君たちはどう生きるか』について語りますね。

久しぶりにアートラバーに入室したんで、書き綴りたいと思います。


結論から言うと、宮崎駿監督の
アーティストとしての強い矜持を感じた作品。

もっとわかりやすく言うと、

「自分の好きなことや伝えたいこと」を
マーケットニーズや視聴者がどうとかの
視点ではなく表現する、

ある種の現代アート的作品だなと思ったわけです。

いい意味でエゴの塊を表現した作品で、

宮崎駿監督のアーティシズムを感じた作品でした。

あ。いい意味でエゴっていうのは、

本来アーティストっていうのは
誰かのお困りごとを解決するわけでもなく、
誰かに依頼されたものを制作する役割ではなく

自分の内側のアウトプットであることが
大半だったりするので、それって言い方を変えると
「作者のわがまま」を表現することでもあるんですね。

言い方悪くすると作者の

「マスターベーションとも捉えられてしまう

領域のわがまま」がアートの本質だったりします。

特に現代アートは。

※勿論全てのアートがそうなわけではないですが一派的には。

宮崎駿監督の作品は言わずもがな
今まで全て大衆から評価され求められているものを
創ってきたと思うのですが今作がSNS上などで

「賛否両論」となるキッカケはまさに
ここにあるなー、と思うわけです。

①一般的に大衆にわかりやすく評価されやすいマーケットにある意味で迎合した作品

②一般的にわかりにくいけど、わかる人にわかってもらえれば
いいという作者のやりたいこと全解放の剥き出しの作品

今作は②に振り切っていたなという印象で
前述したような「アーティストとしての強い矜持」を感じた次第です。

ああ、ようやく好き勝手、
魂を解放されたんだなという印象でした。

それが良いか悪いか、良かったか良くないかは
みる人にによりけり、人それぞれ。

例えばピカソの絵が好きな人もいれば
わからない人もいるわけでそこに
正解不正解がない領域だという意味では、
やっぱりこれは宮崎駿監督のアート作品でした。

82歳にしてこれまで20作品以上制作してきて、
ようやく「自分がやりたいことを全解放」
したんだなと思ったときに僕も

「やりたいことをやって生きている立場」として
まだまだやれることあるし、
まだまだマーケットインして市場を掴んでいく
姿勢は大事だしわかる人にわかってもらえれば
いいやスタイルでやってきましたが

小さくまとまってしまうから、
もっとわかりやすく一般に理解される活動を
するべきだなと反省すらさせられた一日でした。

音楽も絵画も映画もそうですが
一番エモいことって作品を通じて
作者とコミュニケーションを
図ることが出来る点だと思うんです。

作品が良いか悪いかよりも、
作品を通じて得た「刺激」に対して
自分の内側から湧いた「反応」の行方を
よく観察することが醍醐味だと
僕は思っているので、

非常に今回の作品は僕自身アーティストの
端くれとして学ぶべきものがあった。

収穫が大きかった。
映画のチケットなんて2000円程度ですが
安すぎるこの学びは。

宮崎駿監督のエピソードにこんな話がある。

ある母親が「自分の幼い子どもがトトロが大好きでビデオが擦り切れるまで見てる」と言われて
宮崎駿監督は大きなショックを受けたらしい。

映画は一度見ればいい、
そのあとは本当に自然の中に入って遊んで欲しかった。

にもかからず、ずっと自分の作った
アニメのビデオにかじりつく子供が現実と知る。

宮崎駿監督は
「アニメーションを通じていかに現実世界が素晴らしいか美しいか」を伝えたいのに

実際に子供たちは現実の世界より
アニメーションに没入してしまっている
自分の矛盾に気づく。

子どもたちは宮崎駿監督の技術の結晶によって
造形した「現実よりも素晴らしいアニメーション」の
美に囚われてしまうわけですね。

この事実に恐らく目をそむけたくなくて
今回の作品はなんか登場人物(登場動物)が
全体的に気持ち悪くて、
アニメーションで恐怖と不吉・不穏な
イメージを演出してアニメーションで

ネガティブな部分を全面に出していたような
気がします。自分を偽ってきたことに対する
告白というか懺悔みたいなものを感じました。

映画『君たちはどう生きるか』

これSNSで色々な方が賛否両論で
ネタバレになるから中身は言えないけど、、、、

みたいな形でたくさん論評されてますが、
「さすが宮崎駿監督」と、
そのレベルの高さに衝撃を受ける人もいれば
「難解すぎる」と不評の感想もあるようです。

今のところ世間の評価は真っ二つ。

でも、それ自体が作者側の意図であり、
すべてマーケティングだなあと大変勉強になりました。

議論をSNS上でさせる仕組みを創ったわけですね。
マーケターの端くれとして
これまた勉強になる作品でした。

作品自体は宮崎駿監督のアートで
帰結しているけれど

売り方は超絶マーケティング、
大衆心理を理解した売り方。

これ最高のアートとマーケティングの横断思考、
行き来なんです。僕的にはまさに
これ以上ないセンスフル・ワーク。

ああ、勉強になった。

あとこの作品は難解だからこそ

「わかる人にはわかる」、
「わからない人にはわからない人」という

ある種の「わかる人」ヒエラルキーを
造形させることによって

「私はわかる人側で居たい」という
心理を視聴者側に、
自然偶発させている側面がある。


「分かる人には分かる」という
暗黙のサジェスチョンで
マウンティングしている人もSNSで多い。

映画という大衆文化に偏差値を持ち出して
「私はわかる人」と自らのインテリジェンスを
自負しているようなことが起きている気がする。

僕自身は結論、
この作品で学んだことや収穫がハンパなかった!

ただ、この作品を「すごくよかった!!」と
言っている方がどれだけこの作品の本質を捉えて

良いと言っているのか、はなはだ疑問も残る。


良かったと言ってる人に

「どんな点がどう良かったのか?」をすごく聞きたい、
教えて欲しい気持ちもある。

ここまで議論を生んだり感想を書かせたくなる
感情心理を付いた作品という意味では
マーケティング大成功。

正解や不正解がないからこそおもしろい。

そして、ここまでハッキリと宮崎駿監督本人が、
伝えたいメッセージをダイレクトに
打ち出した映画はないと思いました。

ジブリ映画は観れば観るほど、理解が深くなり、
1度では消化し切れないものが多いですから

何度かこの作品を見て
もう少し奥底を感じてみたいと思いました。

いずれにしても、まだ観ていない方はオススメです。